桐生大学紀要
Online ISSN : 2435-7049
Print ISSN : 2186-4748
緑色蛍光タンパク質発現大腸菌の増殖及びタンパク質発現に対する糖・アミノ酸の代謝の影響
小林 葉子
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キーワード: 単糖類, 二糖類, pH 変化, 酢酸
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2022 年 33 巻 p. 23-31

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抄録

原核生物から真核生物において,栄養の摂取は増殖やタンパク質の発現に影響する.本研究では,緑色蛍光タン パク質(GFP)を発現する大腸菌 BL21(DE3) を用いて,栄養条件が増殖とタンパク質発現に及ぼす影響を検討し た.GFP を発現する BL21(DE3) をグルコース,フルクトース,マルトースをそれぞれ 0.1%添加した LB 培地で培養すると,GFP の蛍光強度は対照条件の 20%以下に低下した.また,培養液中の酢酸量は増加し,培養液は酸性化した.低栄養培地で GFP を発現する BL21(DE3) を培養すると増殖及び GFP の発現量も低下した.グルコースあるいはフルクトースを含む低栄養培地で培養すると,GFP の蛍光強度とタンパク質の発現量は,さらに減少し,培養液の pH は低下した.一方,ガラクトースとラクトースを添加した低栄養培地では,GFP の蛍光強度と GFP の発現量が増加し,培養液の pH は上昇した.  以上の結果から,培養液の pH 変化は,糖,アミノ酸の代謝を反映すること,糖の代謝が促進することによって pH が低下し,低栄養状態でグルコースやフルクトースが存在する場合は,タンパク質の発現が抑制され,一方,ガラクトース及びラクトースが存在する場合には,タンパク質合成が促進されること,豊富な栄養条件は,糖代謝による pH の低下による増殖の阻害やタンパク質の発現抑制を緩衝する作用があることが示唆された.

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© 2022 桐生大学・桐生大学短期大学部
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