主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム
回次: 4
開催地: 東京都
開催日: 1986/01/18
p. 44-53
I 緒言
妊娠経過中に羊水量に異常が認められた場合,児の予後が悪いことは以前からよく知られた事実である。Chamberlainら1), 2)は超音波による羊水の簡易測定法を7,562例について検討し,羊水過少と診断された場合の周産期死亡率は正常例の約40倍近くあり,高度の羊水過多と診断された場合の周産期死亡率は正常の約7倍であると報告している。先天奇形という観点からみると羊水過少群の9.3%に,過多群の4.1%に奇形が認められる。過少群の大部分は腎尿路奇形であり,過多群には消化管奇形のほか,中枢神経系,心臓の奇形などが認められる。このように重要な羊水にもかかわらず,羊水の定量的評価法に関しては一定した見解は得られていないのが現状である。羊水量の定量的測定に関して,以前は羊水腔への色素注入後の希釈度測定が,最近は超音波断層像からの羊水量の評価が試みられている。しかしながら,これら羊水量測定の定量性は明らかでなく,臨床での応用が十分とはいえなかった。本稿では羊水量測定の問題点,特にその定量性について検討し,さらに羊水過少,過多症例の臨床について解説する。