2022 年 58 巻 1 号 p. 120-125
深部静脈血栓症(DVT)と肺血栓塞栓症(PTE)は一連の疾患概念であり,静脈血栓塞栓症(VTE)と称される.妊娠第1三半期にVTEを発症した症例1は,PTE併発のため一時的下大静脈(IVC)フィルターを留置したが,抗凝固療法後にIVCフィルターを抜去し,経腟分娩することができた.妊娠第3三半期にVTEを発症した症例2は,腸骨静膜血栓の器質化・消退を確認できぬまま陣痛が発来してしまい,経腟分娩の直前に一時的IVCフィルター留置を要した.妊娠第1三半期と妊娠第3三半期では,VTEの発症メカニズムや分娩までの時間的猶予が異なり,IVCフィルター留置の適応など,VTEの管理ポイントにいくつかの差異が存在した.