日本周産期・新生児医学会雑誌
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教育講演
周産期医療とがん・生殖医療の接点を考える-小児・AYA世代がん患者のサバイバーシップ向上を志向したプレコンセプションケア
鈴木 直
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2021 年 56 巻 4 号 p. 574-577

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抄録

 はじめに

 がん・生殖医療とは,「がん患者の診断,治療および生存状態を鑑み,個々の患者の生殖能力にかかわる選択肢,意思および目標に関する問題を検討する生物医学,社会科学を橋渡しする学際的な1つの医療分野である.臨床においては患者と家族が子どもを持つため,また,その意味を見つめなおすための生物医学的,社会科学的なほう助を行うことにより,生殖年齢およびその前のがん患者の肉体的,精神的,社会的な豊かさをもたらすことを目的としている(日本がん・生殖医療学会)」.本領域は生殖医学のみならず,腫瘍学をはじめとしたがんにかかわる学問や周産期医学,心理学や看護学などにまで及ぶ横断的な医療であり学際的な領域となっている.がん・生殖医療の原則は,対象ががん患者であるため,原則としてがん治療が何よりも優先とされることから,患者の主治医となるがん治療医と生殖医療を専門とする医師との密な医療連携のもと,日本癌治療学会の本診療ガイドライン2017年度版に則って,妊孕性温存療法の適応決定が厳格に行われるべきである.そして,適応が決定された妊孕性温存療法の施行のエビデンスを集積するために,がん医療の観点ならびに生殖医療の観点から2つのアウトカムの検証は必須となる.なお,アウトカムには,がん側のアウトカム(予後)と生殖側のアウトカム(生児獲得)がある.

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© 2021 日本周産期・新生児医学会
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