2023 年 14 巻 2 号 p. 65-73
はじめに:頚椎症性脊髄症(CSM)において屈曲位K-line(-)の場合,(+)に比べて後方除圧術後の治療成績が低いと報告されている.当院の手術症例を後ろ向きに追跡調査し,屈曲位と中間位の順に(++)のA群と(-+)のB群に分けて後方除圧術の治療効果や画像上の形態変化を比較検討した.
対象と方法:選択基準をCSM,40歳以上,後方除圧術,術後6ヶ月以上追跡可能な症例とした.臨床成績や,K-lineと前方骨性要素との最小距離(KLBH),局所後弯角,椎間ROM,C2-C7角,MRI所見などを評価できた症例は42例あり,これをA群31例と,B群11例に分けて比較した.
結果:KLBHはB群で有意に減少しており,術前中間位K-line(+)が術後(-)に転じた症例が2例あった(全てB群).局所後弯角≧10°や椎間ROM≧10°を有する例はB群で有意に多かった.MRI所見や臨床成績は2群間に有意差を認めなかった.
結語:CSMにおいて後方除圧術後に中間位K-line(+)から(-)に転じるリスク因子として,術前の屈曲位K-line(-),局所後弯角≧10°や椎間ROM≧10°が示唆された.