2019 年 12 巻 p. 64-90
本研究では,重度障害者の虐待の早期発見や権利擁護ために必要な現状把握の方法について,全国の自治体で活用できる手引きの作成を行うことを目的に,自治体を対象にした悉皆調査及び,先駆的な取り組みを行っている自治体のヒアリング調査を行った.その結果,障害者手帳所持状況と福祉サービス等利用状況のデータを突合する形で重度障害のある住民の現状把握をしている自治体は,3割程度に止まっていた(回収率65.0%).現状把握の具体的な方法は,「保健師等による訪問」,「データの突合」,「多職種からの情報提供」,「調査」等であった.一方,把握できるがしていない自治体は5割に及んでおり,その理由は「必要性を感じない」,「事務量的,人員体制的に困難」等であった.本稿は,現状把握をしていない自治体が現状把握の取り組みを検討する際の基礎資料となるよう,自治体が現状把握することの根拠,現状把握の方法,現状把握の方法と自治体規模の関係,現状把握後の自治体の動きについてまとめたものである.