日本助産学会誌
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不妊治療を受けた妊婦の不安及び対児感情と治療背景
趙 菁佐々木 晶世佐藤 千史
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キーワード: 不妊症, 妊婦, 不安, 母性, 対児感情
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2006 年 20 巻 1 号 p. 1_99-1_106

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抄録

目 的
本研究では不妊治療の有無とその種類が妊婦の不安および対児感情にどのように影響するかを明らかにすることを目的とした。
方 法
首都圏にある3ヶ所の産婦人科医院に通院していた妊婦250名を対象に無記名自記式質問紙を配布した。主な調査項目は,属性,治療の有無,母性心理質問紙,対児感情評定尺度,不妊治療を受けた場合には治療の種類や期間,治療開始から妊娠までに気になったこと(Visual Analog Scaleによる)とした。
結 果
201名から回収され(回収率80.4%),不妊治療した妊婦(不妊群)が53名,自然妊娠の妊婦(自然群)が148名だった。母性不安は「育児の予想」,「容姿の変化」に関して不妊治療した妊婦より自然妊娠した妊婦の方が有意に強かった。対児感情では不妊治療した妊婦の方が有意に好ましい状態であった。不妊治療の有無に関わらず,妊娠後期の方が初・中期より有意に母性不安が強かった。また,母性不安が高い妊婦は対児感情が好ましくない状態であった。さらに,不妊治療を受けた妊婦のうち,今回妊娠に至った治療を一般不妊治療(タイミング療法,ホルモン療法,人工受精)と高度生殖医療(体外受精,顕微鏡受精)の2群に分けて分析したところ,高度生殖医療を受けた妊婦の方が,治療を辛いとは思わず,また,治療費を負担に感じていなかった。
結 論
不妊群より自然群の方が母性不安の得点が高く,対児感情が好ましくなかった。したがって,妊娠中は不妊治療の有無に関わらず,妊婦の不安や対児感情に合わせた情報提供やカウンセリングを行なう必要がある。

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© 2006 日本助産学会
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