日本細菌学雑誌
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ホルマリン処理菌を用いたスライド凝集反応によるCampylobacter jejuniの血清群別法
斎藤 香彦高野 伊知郎高橋 正樹柳川 義勢伊藤 武工藤 泰雄大橋 誠
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1987 年 42 巻 2 号 p. 499-512

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抄録

Campylobacter jejuniによる下痢症の集団発生に際して,感染経路や感染源を追求したり,本菌の生態学的研究の応用を目的とし,本菌の血清学的群別法を開発した。
ヒト下痢症由来のC. jejuni 6株の121C 2時間加熱菌およびホルマリン処理菌,それぞれに対応する抗血清を用いて抗原解析を行つた結果,耐熱性と,易熱性と少なくとも2種の抗原が存在することを明らかにした。前者には菌株間の明瞭な特異性は認められなかつた。後者は100C 1時間の加熱で完全には抗原性が失われない比較的易熱性の抗原であるが,異なつた由来の菌株間に特異性が認められた。
そこでホルマリン処理菌で作製した抗血清とホルマリン処理菌とのスライド凝集反応による群別法の開発を試み,現在までに少なくとも33種類に群別できることを明らかにした。その33種の血清群にTCK1からTCK33までの番号を与えた。
TCK1∼33の抗血清を用いて各種由来株を群別した結果,集団発生例,国内散発下痢症例および海外旅行者下痢症例などヒト由来の2,305株中1,768株(77%)が群別された。また,家畜・家禽,ペット,野鳥および食肉など動物由来では767株中455株(59%)がTCK1∼33のいずれかの群別用血清と反応し群別された。
前者では6.3%,後者では3.7%の菌が2種以上の群別用血清と同時に反応,同じく15%および37%はいずれの血清とも反応せず群別不能であつた。
家庭内流行の一事例では患者由来株と推定原因食からの分離菌の血清群が一致した。また他の大半の流行事例でも,分離菌の血清群は均一かあるいは1種の型に集積した。

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