日本小児アレルギー学会誌
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第46回日本小児アレルギー学会シンポジウム5 小児アレルギー研究の方向性を探る
アレルギー専門医として目指すものはなにか?疫学研究から学んだもの
下条 直樹河野 陽一鈴木 洋一
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2010 年 24 巻 1 号 p. 97-104

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抄録

アレルギー疾患の診療にはまだまだ多くの未解決の問題がある.アレルギー専門医による今後のさらなる研究が必要であり,コホート調査を含む疫学研究はその基本と考えられる.最近の数年間に我々が行ってきた疫学研究からいくつかの興味深い示唆が得られておりここに紹介する.1)乳幼児健康診査受診児を対象としたコホート調査からは,アトピー性皮膚炎の自然歴が非常にheterogeneousであり,早期発症に男児,食物アレルギーの合併,出生時からのネコの飼育が関連することが明らかとなった.2)小学生を対象とする遺伝疫学研究からは,ダニに対する感作の程度は幼児期の保育園通園の有無により影響されるが,CD14やIL-4レセプターαの遺伝子多型の違いによって反応が異なっていた.すなわち,ダニ特異IgE抗体価は遺伝子・環境因子の相互作用により規定されていることが明らかとなった.欧米,さらに最近では東南アジアの国々でも,アレルギー疾患の発症・経過の解析のためにコホート研究が行われているが,我が国ではほとんど行なわれていない.我が国独自の包括的コホート研究が必須と考える.

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© 2010 日本小児アレルギー学会
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