日本LCA学会誌
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研究論文
食料消費データを用いた世帯所得別の栄養摂取とカーボンフットプリントの分析
藤江 林旭龍 吟吉田 好邦
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2022 年 18 巻 4 号 p. 230-239

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抄録

食事の変化は、食料生産が環境に与える影響を加速させると同時に、個人の健康に対しても深刻な影響を与える可能性がある。したがって、環境と健康の両方に配慮した食事は、人類の持続可能な未来のために不可欠な部分である。そのためには、継続的な食事の変化による栄養摂取量や環境への影響を分析することが重要である。しかし、家庭単位での食料消費と環境への影響を結びつけた研究や、世帯所得の違いによる、食料品目消費量と栄養摂取量に着目した研究は少ない。このような状況を踏まえ、本研究では、家計調査を用いて、200 品目の食料消費データから世帯所得別の栄養摂取とカーボンフットプリントを算出した。また、結果において、日本におけるタンパク質の摂取と、二酸化炭素排出量の関係に注目した。主な結果は次の通りである。1)年間五分位収入階層が高いほど、タンパク質摂取量が多いことが観測される。2)魚介類から摂取するタンパク質は五分位階層間で有意な差がなかったが、肉類から摂取するタンパク質は最も年収が高い階層と最も年収が低い階層の間で 2 倍以上の差が見られた。 3)年間収入階層が高いほど、肉類の消費による環境への負荷が大きいことがわかった。

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