2014 年 55 巻 5 号 p. 210-215
本研究は,ソルビン酸の使用が認められた異臭苦情食品において,トランス-1,3-ペンタジエンが異臭物質として検出されたことから,その生成要因を解明することを目的とする.異臭苦情食品からペニシリウム属真菌が分離され,ITS領域およびD1/D2領域のDNA塩基配列解析の結果,Penicillium chrysogenumと同定した.分離したP. chrysogenumをソルビン酸カリウム存在下で培養したところ,トランス-1,3-ペンタジエンの生成が認められた. P. chrysogenumのトランス-1,3-ペンタジエン生成能は,培養液中のpHに影響された.本異臭苦情は,ソルビン酸が使用された苦情食品中でP. chrysogenumが混在し,ソルビン酸の分解生成物であるトランス-1,3-ペンタジエンが発生したことが要因であると示唆される.