2016 年 23 巻 1 号 p. 9-24
日本原子力研究開発機構では,これまで20年にわたり,高レベル放射性廃棄物の地層処分技術の基盤研究開発を行う深地層の研究施設の1つとして超深地層研究所計画を進めてきた.本計画を1995年に公表した当時,地域社会において本計画が高レベル放射性廃棄物の地層処分施設の設置につながるのではないかとの不信感や懸念が生じたため,原子力機構は,地域社会との共生に向けた活動を行った.本稿では,原子力機構が本計画において実施した地域社会との共生に向けた活動を,NIMBY的施設の立地選定プロセスの社会心理学的な評価フレームとして取り上げられている手続き的公平さと分配的公平さの2つの視点で規範的に分析した.その結果は,手続き的公正さという観点では代表的な市民の参加を得た地域パートナーシップの早期の構築が重要であること,そしてその場において分配的公正さなどを熟慮するために,情報提供や財政的な支援で支えていくことが重要であることを示唆した.