真菌と真菌症
Online ISSN : 1884-6971
Print ISSN : 0583-0516
ISSN-L : 0583-0516
病原性黒色真菌の発育温度と皮膚温
局所温熱療法に関して
仲 弥原田 敬之西川 武二
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 27 巻 4 号 p. 245-250

詳細
抄録

近年,黒色真菌感染例に対して局所温熱療法が用いられ,有効な結果が得られているが,その作用機序については未だ明確にされていない.我々は,病原性黒色真菌5種25株について,その発育に及ぼす温度の影響を観察するとともに,懐炉圧抵時の表面皮膚温および深部温を測定し,自験7例のクロモミコーシスの病理組織標本における菌要素の存在部位を比較検討した.その結果,1)上限発育温度はFonsecaea pedrosoi 39℃, Exophiala jeanselmei 36~38℃, Exophiala dermatitidis 40~42℃(ただし顆粒形は38℃),Phialophora verrucosa 37℃, Cladosporium trichoides 45℃以上であり,41℃の環境下にて,F.pedrosoiま25日目,E.jeanselmeiは5日目,P.verrucosaは5日目に死滅していたが,E. dermatitidis, C. trichoidesは25日後も死滅しなかった.2)懐炉貼布にて皮表42℃のとき深さ3~4mmの部位は40.5℃まで上昇した.3)局面型を呈する病変組織内において,黒色真菌の菌要素は皮表から1.5mm,炎症性細胞浸潤は4mm以内に認められた.以上の結果よりクロモミコーシスにおいては,原因菌がF. pedrosoi, E. jeanselmei, P. verrucosaであれば局所温熱療法が有効であることが示されたが,温熱効果には菌に対する直接効果以外にも宿主側の要因も考えられるので,更に検討が望まれる.

著者関連情報
© 日本医真菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top