真菌と真菌症
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菌球型肺アスペルギルス症の研究-特にその発生機序について-
澤崎 博次
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1981 年 22 巻 1 号 p. 6-27

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抄録

菌球型肺アスペルギルス症は肺の既存の空洞内などにアスペルギルス (以下「ア」と略) 菌が腐生的に発育したもので (二次性), 肺組織内への侵入はないとする従来の支配的な考えの是正を求めた研究成果である. 詳細な病理組織学的検索の対象となつた菌球症例は13例. いづれも手術で治癒した患者の切除肺である. 全ての症例に於て「ア」菌は肺組織内に侵入している. その侵入箇所は空洞壁, 気管支壁, リンパ濾胞内が多く, 稀にはリンパ腺被膜や血管壁などもある. 組織反応は急性滲出型と慢性増殖型であり, 後者では異物型巨細胞を主体とする肉芽腫形成の特徴がある. 病巣内の菌所見, 就中その量が少く, 形がいぢけたものが多い反面, リンパ濾胞の増生など組織反応が強く, 加えて血清沈降反応陽性, 免疫グロブリン増加等の所見が見られることは本疾患の発生進展にアレルギー・免疫がつよく関与していることを示している. 論文の後段に於ては特殊症例の観察と前段の病理組織所見を基として「ア」菌の肺組織への侵入, 着床, 菌球への発育場所を中枢部気管支に求め, 病巣進展の機序を基本的には菌球による機械的なcheck-valve作用と免疫アレルギー現象としての抗原抗体反応による組織破壊とに求め様とした.
以上は一次性発生を念頭においての推論であるが所謂二次性の場合も既存の腔所内での菌球発育以後の経過は同様のものと想像される.

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