真菌と真菌症
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本邦における深在性真菌症の統計的観察
伊藤 章
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1980 年 21 巻 4 号 p. 239-248

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抄録

1970年より1974年迄の5年間についての本邦深在性真菌症1,896例を, 日本病理剖検輯報 (Annual of the Pathological Autopsy Cases in Japan) により, また1971年より1976年7月迄の5年7ヵ月間については, 全国集計により201例を集計し, これらの成績を今迄の集計と比較した. 病理剖検輯報よりみた真菌症は, カンジダ症654例, アスペルギルス症513例, クリプトコックス症232例, ムコール症57例の順で, 全体では, 1,804例 (95.1%) が続発症例である. 基礎疾患としては, 白血病, 固型悪性腫瘍, 血液疾患, 悪性リンパ腫, 肝疾患の順である. 罹患臓器は, アスペルギルス症は, 肺, 気管支が, カンジダ症では, 消化管が, クリプトコックス症では, 肺, 脳, 腎が, ムコール症では, 肺, 腎, 心に多く病変が認められる. アンケート集計201例でも菌種別では同じ順序であり, 肺真菌症が半数を占め, 治療法の進歩に伴い, 腎移植後 (23例), 人工弁置換術後真菌症 (12例) も認められる. 本邦における真菌症発生の現況をみる上で, これらの集計は1つの素材となり得るであろう.

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© 日本医真菌学会
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