日本医真菌学会雑誌
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兎から感染したと思われるTrichophyton mentagrophytesによる白癬の2例
飯塚 崇志二宮 淳也浜口 太造長瀬 真智子滝内 石夫
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1997 年 38 巻 3 号 p. 247-252

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抄録

兎が感染源と考えられる,Trichophyton mentagrophytesによる白癬の2例を報告した.症例1は28歳,女性.初診の3か月前より,室内で2羽の兎を飼育していた.2か月前に1羽の兎に脱毛巣を生じ,その直後に別の兎に同様の症状が生じた.初診の10日前より胸部の皮疹に気づき来院,病巣よりT.mentagrophytesを分離した.兎は既に治療済みであったが,動物病院に保存されていた菌株についてT.mentagrophytesと同定できた.
症例2は,3歳,男児.初診の約1か月前に体部白癬に罹患.某医を受診し治療をうけ,これは治癒したが,2-3週間前より頭部の鱗屑と脱毛に気づき,同じ医院を受診.頭部白癬の診断で外用抗真菌剤による治療を受けていたが,ケルスス禿瘡に進展したため来院.病巣よりT.mentagrophytesを分離した.内服抗真菌剤による治療継続中,亜鉛華軟膏を併用したところ,著しい増悪を招き,外用の中止により急速に改善した.初診の約2か月前より室内で飼育していた兎に,患児の臨床像に類似した鱗屑と痂皮を伴う脱毛巣があったという.兎は既に治療済みであったため,兎から菌を分離する事はできなかった.なお,患児より分離したT.mentagrophytesは,交配試験の結果Arthroderma vanbreuseghemii(-)株と同定された.

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