日本医真菌学会雑誌
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皮膚糸状菌の同定におけるmultiple media flask culture methodの有用性の検討
藤田 繁伊藤 雅章岡 吉郎
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1993 年 34 巻 2 号 p. 171-176

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抄録

皮膚糸状菌の同定を簡便確実に行うために, 多種類の培地を用いた顕微鏡的形態の観察と, 毛髪穿孔テスト, 尿素分解テスト, 紅色色素産生能の判定を同時にしかも毛髪穿孔テストを固形培地で行うことができるmultiple media flask culture methodを開発し, その有用性を検討した. flask culture methodとmultiple media flask culture methodを用いた著者の提唱する分離培養同定マニュアルにより, 直接鏡検陽性の白癬の488病巣からTrichophyton rubrum 231株, T. mentagrophytes 156株, T. tonsurans 2株, Microsporum canis 1株, Epidermophyton floccosum 3株の合計393株を分離同定することができた. 同定不能であるが皮膚糸状菌と思われる真菌は3株, 皮膚糸状菌以外の糸状菌が11株, 酵母様真菌が7株分離され, 74病巣からは真菌が分離されなかった. 488白癬病巣から皮膚糸状菌は396株分離培養され, その確率は81.1%, 菌種が同定された皮膚糸状菌は393株でその確率は80.5%であった. また, 皮膚糸状菌396株中393株で菌種を同定することができ, その確率は99.2%であった. multiple media flask culture methodは熟練者でなくとも, 皮膚糸状菌を比較的短時間に簡便, 確実に同定することができる有用な皮膚糸状菌同定法であると考えられる。

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