1992 年 33 巻 2 号 p. 207-211
我々はneutral red (NR)染色を用いて鱗屑中の菌要素のviabilityを評価し,白癬病巣における直接鏡検所見と真菌培養所見の解離の理由を検討した.110名の白癬患者から採取した鱗屑中の菌要素をNR染色し,その培養結果と比較検討した結果,両者に強い正の相関関係が認められた.また,3H-チミジンを用いたオートラジオグラフィーの結果,銀粒子を認めた細胞,すなわち生菌はNR染色陽性であったが,銀粒子を認めない死菌ではNR染色陰性であった.これらの事実はNR染色陽性細胞が生菌である可能性を強く示唆し,NR染色は白癬症例の鱗屑中菌要素のviabilityの評価に有用であると思われた.また直接鏡検所見と培養所見の解離はテクニカル・エラーの他に主に鱗屑中菌要素のviabilityが低下しているものがあるために生じるものと考えられた.