九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題28[ 呼吸・循環・代謝④ ]
慢性維持血液透析患者におけるシャント不全の要因に関する検討
O-159 呼吸・循環・代謝④
広田 桂介福島 真仁今井 徹朗馬場 恵理子田島 裕之橋田 竜騎松瀬 博夫玻座真 琢磨深水 圭平岡 弘二
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p. 159-

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抄録

【目的】 慢性腎不全患者の生命維持には透析管理は重要である。血液透析が円滑に実施されるには、動静脈シャントの十分な発達、および長期に渡る開存が必須であり、シャント不全は患者のQuality of lifeを低下させる有害事象である。本研究の目的は、外来慢性維持血液透析患者におけるシャント不全の要因を検討することである。

【方法】 診療録を後方視的に観察した。シャント狭窄または閉塞により経皮的血管拡張術またはシャント再作成術実施の有無により、シャント不全群および非シャント不全群の2群に分類し、背景因子、体組成、血液・生化学検査データ、透析因子(kt/v、透析期間等)および身体活動量をウィルコクソンの順位和検定を用いて横断的に比較検討した。さらに、シャント不全に関連プロファイルを特定するために、決定木解析を用いて評価した。決定木解析における目的変数は、シャント不全の有無で、説明変数には背景因子、体組成、生化学検査データ、透析因子および身体活動量を投入した。背景因子、体組成、血液・生化学検査データ、透析因子および身体活動量の評価は2022年6月のデータを用い、シャント不全を引き起こした期間はその前後6ヶ月とした。体組成は、コンピュータ断層診断装置を用い、骨格筋指数、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積および筋肉内脂肪を検討した。また、身体活動量の評価は、Bakerが開発したLife-Space Assessment(LSA)を用いた。LSAの得点は120点満点で、その得点が高いほど、身体活動量が高いことを示している。統計解析は、JMP Pro 16(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を使用し、統計学的有意水準は0.05とした。

【結果】 本研究の対象者は、外来慢性維持血液透析患者19名(中央値:年齢65歳[四分位範囲:49-75]、男性/女性:8/11, Body mass index(BMI):21.8 ㎏/m2[四分位範囲:18.7-25.6])であった。本研究において、外来慢性維持血液透析患者6名(31.6%)にシャント不全を認めた。2群間比較において、背景因子、血液・生化学検査データ、体組成、透析因子およびLSAに有意差を認めなかった。決定木解析においては、シャント不全に関連する要因の第1分岐因子はBMIで、BMIが24.5 ㎏/m2以上の患者の61.7%にシャント不全が認められた。一方、BMIが24.5 ㎏/m2未満の患者16.5%にシャント不全が認められた。また、BMIが24.5 ㎏/m2未満の患者の第2分岐因子は、LSAであった。LSA49.5点未満の患者の38.4%にシャント不全を認めた。また、LSA49.5点以上の患者にはシャント不全は認められなかった。

【考察】 本研究において、外来慢性維持血液透析患者におけるシャント不全の要因はBMIであった。先行研究においてBMIは、シャント不全の予測因子であると報告されており、先行研究と本研究の結果は一致している。維持血液透析患者における高BMI患者は、静脈循環の内膜過形成が指摘され、シャント不全の1要因であると報告されている。また、もう一つの要因として身体活動量が同定された。シャント不全と身体活動量の関連は不明であるが、シャント不全とADLおよびフレイルとの関連が報告されており、シャント不全は身体活動量と関連があると考えられる。

【結論】 本研究において、外来慢性維持透析患者におけるシャント不全の要因は、高BMI、または、身体活動量が低い患者であった。これらのプロファイルを有する患者において、減量等の栄養管理および患者教育を含めた包括的リハビリテーションは、シャント不全予防の一助となる可能性がある。

【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、ヘルシンキ宣言のガイドラインに準じ、当大学倫理委員会の承認を得て実施した。患者からインフォームドコンセントを得るためにopt-out approachを用いた。

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