九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題19[ 日常生活活動① ]
回復期リハビリテーション病棟の機能的自立度に関連する因子
O-110 日常生活活動①
上田 萌竹内 泉大平 清貴
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p. 110-

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抄録

【目的】 令和2年度診療報酬改定によりリハビリテーション実績指数が引き上げられ、早期のADL獲得がより重要となっている。当院回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ病棟)では様々な併存疾患を抱える後期高齢者の入棟割合が高く、ADL獲得に難渋する場合を多く経験する。そこで退棟時の機能的自立度に影響を与える因子を明らかにしADL改善や予後予測の一助とすることを目的とした。

【方法】 2018年11月~2019年12月に当院回リハ病棟に入棟した整形疾患患者で死亡例、急性期病院転院例、データ欠損例を除いた67例(男性17例、女性50例)の入棟時の年齢、FIM認知項目、BMI、Alb、簡易栄養状態評価法(Mini Nutritional Assessment:以下、MNA)、骨塩量、骨格筋量、四肢骨格筋量指数(Skeletal Muscle mass Index:以下、SMI)、1日平均単位数、在棟日数を調査し、退棟時のFIM運動項目と調査項目の関連を検討した。調査項目をShapiro-Wilk検定にかけ、結果より正規分布に従うAlb、骨塩量、MNAはPearsonの相関係数を用い、正規分布に従わないその他の調査項目はSpearmanの順位相関係数を用い解析を行った。すべての統計解析にはIBM SPSS Statistics version22を用いた。なお本研究ではデータの扱いに十分配慮しヘルシンキ宣言に基づき実施した。

【結果】 対象患者の平均年齢は80.8±12.3歳であった。退棟時のFIM運動項目と相関があったのは入院時FIM認知項目(r=0.449、95%信頼区間0.294≦p≦0.6601、p<0.01)、Alb(r=0.284、95%信頼区間0.047≦p≦0.4907、p<0.02)、骨格筋量(r=0.295、95%信頼区間0.059≦p≦0.4998、p<0.015)、SMI(r=0.295、95%信頼区間0.059≦p≦0.4998、p<0.015)、在棟日数(r=-0.349、95%信頼区間-0.544≦p≦-0.119、p<0.01)であった。

【考察】 入棟時のFIM認知項目やAlb、骨格筋量、SMIと退棟時のFIM運動項目には正の相関があり、認知機能低下や低栄養、サルコペニアの存在はADL獲得に影響を与えることが示された。先行研究では本邦の回リハ病棟では高率に栄養障害を認め、低栄養とサルコペニアはいずれもリハの帰結や身体機能と負の関連があるとされている。また身体機能とADL獲得の関連性についても多く報告されている。本研究では先行研究を支持する形となり、回リハ病棟に入棟する高齢整形疾患患者も影響を受けることが明らかとなった。また退棟時のFIM運動項目と在棟日数には負の相関があったことより、在棟日数を短縮するためには早期ADL改善の重要性が再認された。本研究での入棟者の平均年齢は80.8歳と高齢者が多く、後期高齢者が自立した生活を送るためには回リハ病棟入棟早期より栄養・運動療法双方に介入し認知機能や栄養状態、骨格筋量の維持が必要であると思われた。

【まとめ】 入棟時の認知機能、栄養状態、サルコペニアの有無が退棟時の機能的自立度に影響を与えており、自立度が高いほど早期に退棟していた。

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