九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
会議情報

一般演題19[ 日常生活活動① ]
当院の回復期リハビリテーション病棟における運動器疾患にて自宅復帰患者の特徴と入院時訪問指導の実施がアウトカムに与える影響
O-109 日常生活活動①
地村 綾歌野 文髙野 直哉芹川 節生
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 109-

詳細
抄録

【目的】 本研究の目的は、当院の運動器疾患を呈する患者の自宅退院に関して、在宅退院に関連する因子を明らかにすることである。また当院の回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期)の特徴として、個別性のある目標設定や退院先の環境に合わせたリハビリ提供を行えるように入院時訪問指導の取り組みを強化しており、アウトカム(入退等FIM、在棟日数等)にどのような影響があったのかを調査した。

【方法・倫理的配慮】 令和4年4月から12月の期間において、当院の回復期病棟に入退院していた228名の患者を対象とした。カルテから疾患名、アウトカム、年齢、家族状況、介護度を調査した。転帰先の因子については、自宅と施設の転帰先を従属変数、説明変数をFIM運動・認知項目、介護者、介護度、性別、年齢としたLogistic回帰分析を行ない有意水準5%で調査した。在棟日数と入棟時運動FIMの関連性については、Spearmanの順位相関係数を使用した。入院時訪問指導については実施群(24名)、非実施群(204名)で群分けし、Mann-Whitney検定を使用し、2群間の差を比較した。欠損値のあるものは除外とした。本研究はヘルシンキ宣言に則り、調査を行った。

【結果】 Logistic回帰分析にてOdds比は介護者(0.0547)、介護度(1.63)、理解(0.704)であった。(p<0.01)入院時訪問指導の実施群と非実施群での入棟時FIM運動・認知項目の差については、食事(p=0.02)、トイレ(p=0.04)、移乗ベッド(p=0.02)、トイレ(p=0.02)、階段(p=0.04)、表出(p=0.01)に有意差がみられた。しかし入院時訪問指導の有無で自宅退院、施設退院の割合、在棟日数には有意な差は認められなかった。

【考察】 自宅復帰者の特徴として転帰先と家族構成について岩瀬らの先行研究によると85歳以上の超高齢者の在宅退院に影響する因子として同居家族の有無が抽出された。Giustiらも70歳以上の高齢者を対象とした研究で介助者の有無が転帰先に影響しているとの報告がある。本研究においても同様の結果を受けており、自宅退院患者の家族の同居有無で差がみられた。また3割が夫婦どちらかの介助者であることも結果としてみられた。転帰先と介護度について西村らの先行研究によると介護度が上がるにつれて、自宅退院率の低下を示しており、今回の研究でも同様の結果となった。個人因子の悪化が家族構成や介護保険の利用という社会的因子に影響していると考えられる。

 入院時訪問指導の有無では、運動器疾患において退院時FIM運動、利得に有意差が認められたと報告されている。入院時訪問指導により家屋内状況、食事などの生活習慣をについて情報収集することで、明確な目標を設定し、在宅生活を想定した医療を提供することで、上記項目のADLの改善が見込めたことが示唆された。

 今回、入院時訪問調査の有無での転帰先の割合や在棟日数に有意差は認められなかったが、今後の展望として入院時訪問調査の件数を増加することで、転帰先に必要な運動機能や社会的要因が明らかになるのではないかと考える。また入院時訪問指導実施する上で、御家族から今後の生活状況に対しての不安や介助量についてのコミュニケーションを行うことで御家族とスタッフとの信頼関係を築き、入院から退院までの経過を円滑に運ぶことができるのではないかと考える。

著者関連情報
© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top