2015 年 12 巻 2 号 p. 5-12
本研究では、自己動作の効果を明らかにすることを目的に、自閉症児1 名を対象に授与動詞構文の指導を行った。研究開始前、2 ~3 語文の発話が多く観察されていた。また、使用頻度は少ないが助詞が含まれた発話も生起していた。実態に基づき、二者が受け渡しをする刺激文を読み、適切に行動することを標的とした。プレ・ポストテストでは、二者間で受け渡しをする動画刺激を呈示した直後に、対象児は「わたす」または「もらう」の動詞カードを文末に置いた。指導1 期では、対象児とST の二者間でぬいぐるみの受け渡しを行った。対象児は呈示された刺激文に応じて自己動作した。指導2 期では、ST1 名を追加して三者間で受け渡しを行った。指導1 期に加えてST 同士の受け渡しが含まれていた。その結果、指導期において標的行動の正反応率に上昇傾向がみられた。また、プレテストと比較してポストテストで正反応率が上昇した。以上の結果から、標的行動の獲得を促進する上で、自己動作を用いた指導方法の効果について考察した。