観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
日本統治期台湾における修学旅行の展開
『台湾日日新報』を中心に
曽山 毅
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2013 年 1 巻 2 号 p. 185-202

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抄録

日本統治期台湾の教育機関が実施した修学旅行について、民族属性や多様な参観地選択などに注目して検討した。とくに、総督府国語学校に導入された修学旅行には統治者/日本人と被統治者/台湾人という図式が顕著に表れたが、これは日本統治期の修学旅行の基底に存在し続けた。1920年代には中等教育機関の中に南支旅行を実施する学校があらわれ、修学旅行における内地と台湾の関係性は相対化され、台湾人と日本人との間に存在する修学旅行における意味づけの相違が判別しにくくなった。1920年代以降、内地修学旅行を再認識する動きが見られたが、これには、内地が修学旅行の絶対的な選択肢ではもはやないという側面と、内地旅行を植民地統治という文脈において復権しようとする側面があった。修学旅行は初等教育機関にまで普及していくが、1930年代には、日本人児童にも内地旅行が要請されるようになり、台北市などが小・公学校児童を対象にした内地修学旅行を実施するようになった。この旅行では日本人児童と台湾人児童の統治・被統治の関係に由来する優劣性にはある種のねじれが生じることになった。

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