日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
高齢者における喉頭運動の視覚フィードバックを用いた喉頭挙上訓練の効果
覚嶋 慶子林 豊彦道見 登谷口 裕重井上 誠
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2014 年 18 巻 1 号 p. 22-29

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抄録

【目的】 摂食・嚥下リハビリテーションのひとつにメンデルソン手技がある.この手技には,患者への教示や動作習得が困難などの臨床的な問題がある.そこでわれわれは,喉頭運動を直接視覚にフィードバックしながら喉頭挙上訓練を行えるシステムを開発してきた.これまで,短期間の訓練効果は,健常者および高齢者を用いて実験的に検証した.次の段階として,今回は,高齢者において連続した5 日間にわたる喉頭挙上訓練の効果を検証した.

【方法】 被験者は,男性健常高齢者10 名(平均70.3±4.6 歳)とした.1 回の喉頭挙上動作は,5 秒間喉頭をできるだけ高い位置に保つとした.次の3 ステップで,喉頭挙上訓練を5 日間継続して行った:1)画面を見ない,2)画面を見る,3)画面を見ない.分析パラメータは,1)喉頭挙上量[mm],2)喉頭挙上時間[s],3)5 mm 喉頭挙上時間[s],4)10 mm 喉頭挙上時間[s]の4 つとした.

【結果】 喉頭挙上量は,5 日目のステップ1/2 間で有意な増加が確認できた.挙上時間は,3 パラメータすべてで1 日目のステップ1/2 間に,5 mm 喉頭挙上時間および10 mm 喉頭挙上時間で5 日目のステップ1/2 間に有意な増加が確認できた.1 日目/ 5 日目間の比較では,喉頭挙上量と5 mm 喉頭挙上時間において,ステップ2 で有意な増加が確認できた.

【考察】 喉頭挙上量では,5 日間の継続訓練により,喉頭挙上法が習得できたと考えられる.安静位以上の喉頭挙上および安静位から5 mm 以上の喉頭挙上は,ともに5 日間で習得可能であった.視覚バイオフィードバックは,5 mm 以上の挙上に効果的であった.一方,安静位から10 mm 以上の喉頭挙上は,視覚バイオフィードバックを用いれば長く挙上できたが,5 日間では必ずしも習得できなかった.以上から,視覚バイオフィードバックを用いた継続訓練は,「喉頭挙上量の増加」,「喉頭の高い位置での維持」に有効であると考えられる.

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© 2014 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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