本稿は大学とファイナンスとの関係の観点から,産学連携とベンチャーキャピタルの現状と課題を探ることを目的とする.現段階では大学のファイナンスに,産学連携,ベンチャーキャピタルはほとんど意味を持っていない.しかし,現在進行中,並びに近い将来に見込まれる制度変更は状況を大きく変える可能性がある.「官民イノベーションプログラム」の下で一部の国立大学は国からの出資金を国立大学ベンチャーキャピタルや投資ファンドに出資できることになった.これは2014年から実質的に動き出したが,現時点では大学の安定した資金調達源にはなっていない.しかし、2018年の2つの法改正は,大学発ベンチャーやベンチャーキャピタルと大学の関係を大きく変え,大学のファイナンスの手段となる可能性がある.