超音波医学
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総説
小児救急の腹部超音波診断
余田 篤青松 友槻
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2011 年 38 巻 3 号 p. 243-254

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抄録

小児の腹痛における画像診断として第1選択肢は単純X線写真であったが,超音波検査の方が情報量も診断率も高い.小児の急性腹症の中で頻度の多い疾患として,腸重積,急性虫垂炎などがあり,頻度の少ない疾患として,胆道拡張症,中腸軸捻転などがある.また,Henoch-Schönlein紫斑病と出血性腸炎は急性腹症として受診することもある.乳幼児では正確な問診や身体所見を得られないこともあり,腹痛を主訴に受診する乳幼児の診断に際して,超音波検査 は有用である.小児の急性腹症の中で超音波検査の感度と特異度の高い疾患は腸重積,急性虫垂炎,中腸軸捻転,胆道拡張症などで,超音波検査だけでこれらの四疾患の確定診断や除外診断が可能である.Henoch-Schönlein紫斑病と出血性腸炎では,急性腹症として誤って開腹術になることがあるが,これらの二疾患の超音波検査の特徴は小腸や大腸の腸管壁の肥厚である.超音波検査で肥厚した腸管壁が観察され,同時に虫垂炎と腸重積を否定すると開腹術を回避でき,これらの二疾患が鑑別に挙げられる.小児の急性腹症の代表的な疾患で,超音波検査が確定診断に最適である腸重積,急性虫垂炎,中腸軸捻転,胆道拡張症と,確定診断は困難であるが超音波検査が有用なHenoch-Schönlein紫斑病と出血性腸炎について疾患の特徴,超音波検査の描出法そして診断について解説する.

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© 2011 一般社団法人 日本超音波医学会
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