農業情報研究
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原著論文
独立小型太陽光発電システムの利用実態と課題
―モンゴルの遊牧民を事例として―
アジヤバト アマルバヤル中島 正裕大谷 謙仁黒川 浩助
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2006 年 15 巻 2 号 p. 139-153

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抄録

モンゴル国では, 遊牧民の生活水準の向上を目的として住居 (ゲル) を電化するために1999年から独立小型太陽光発電システム (SHS) が導入されている. 本研究では, ヒアリング調査 (67世帯) とアンケート調査 (359票) によりSHS利用者の利用実態と未利用者の認識を明らかにし, 今後のSHSの普及定着に向けての課題について検討した. 主な知見として, 以下の5つが得られた.
(1) SHSの導入によって照明とテレビの使用が可能になったことに対して, SHS利用者は高い満足感を得ていた. また, SHSは小型かつ軽量であり, 燃料を必要としないため, 他の電源と比較して, 移動を繰り返す遊牧民のライフスタイルに適合する技術であることが示された. (2) SHSを導入した世帯の78%が「10万ソーラーゲル計画」による補助金と無利子ローンを活用しており, 市場を通しての普及が進んでいない. (3) SHSの課題は, SHSの保証期間が1年以内と短いこと, 修理店または技術者が近くの村落センターまたは県都にいないことなどである. (4) 未利用者のSHSに対する認識度が高く, SHSを購入予定があるという回答者が多いことが分かった. (5) SHSの普及定着及びそれによる遊牧民の農牧業の生産性向上のための課題は, 市場原理に向けた優遇措置の見直し, サポート体制の整備, 農牧業情報の活用環境の整備である.

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© 2006 農業情報学会
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