2011 年 24 巻 1 号 p. 114-116
我々はアンギオテンシンレセプターブロッカー (ARB) の腎保護効果はポドサイト上のAT1レセプターに依存しているという仮説のもと研究を行っている。そのためにAT1gene (Agtra) ノックアウトとNEP25〔immunotoxin『抗Tac (Fv) PE38』でポドシン障害を選択的に引き起こすモデル〕を交配し, ポドサイト特異的ノックアウトマウスを作成した。注射後4週間でAgtr1aノックアウト/NEP25マウス群ではNEP25群に比して尿中アルブミン/クレアチニンが減少しなかった (8.08in KO vs 4.84 in Control)。両群ともに同様の硬化 (0.66 vs 0.82, 0~4硬化スコアで比較) とネフリンの減少 (5.78±0.45 vs 5.65±0.58,0~8scaleで比較) を認めた。
NEP25マウスではAt1アンタゴニストあるいはACEIで明らかに蛋白尿は減少し, 硬化が軽くなった。ヒドララジンではその現象は見られなかった。
さらにアンギオテンシンIIを持続注射するとAgtr1aノックアウト, ワイルドタイプ両者とも微小アルブミン尿が出現した。
したがって, アンギテンシンの阻害はポドサイトのAT1に依存しないでポドサイトを保護し, 糸球体硬化防止につながる。
メカニズムとして, 他の細胞のAT1ブロックかAT1を介さないメカニズムの存在が考えられる。われわれの研究はポドサイト障害による硬化は他の細胞を抑えることが有効であることを示唆している。