日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
秋田県在宅高齢者の緊急事態宣言による日常生活変化に影響を与える要因について
小玉 鮎人菅原 薫久米 裕髙橋 智子小野 剛大田 秀隆
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2022 年 59 巻 1 号 p. 58-66

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抄録

本研究の目的は新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止による緊急事態宣言(緊急宣言)が地域在住高齢者の日常生活変化に与えた影響について明らかにすることである.秋田県内の地域在住高齢者506名(2019年度:332名,2020年度:174名)に対して,通常歩行速度(Usual Walking Speed;UWS),握力,National Center for Geriatrics and Gerontology Functional Assessment Tool(NCGG-FAT)による認知機能,Geriatrics Depression Scale-15(GDS-15),基本チェックリストについて評価した.また緊急宣言後の対象者に対して,COVID-19感染拡大が日常生活へ与えた影響(交流,外出,運動,睡眠の減少)に関する5項目のアンケート調査(COVID-19アンケート調査)を行った.予想に反し,緊急宣言後が緊急宣言前よりもUWSにおいて有意に高値を示し,他の項目に関しても有意差は認められなかった.アンケート調査結果と心身機能評価との相関分析の結果,「睡眠時間減少の有り」とGDS-15(rs=0.200,p=0.019),COVID-19アンケート調査の該当合計数とBMI(rs=0.282,p=0.001)との間に有意な正の相関が認められた.

以上により,本研究はさらに詳細な長期にわたる追跡調査が必要であるものの,感染者数の少ない秋田県の高齢者に心身機能の低下は明らかではなかった可能性がある.またそういった地域であっても,高齢者に対する自粛生活の影響として,うつと睡眠,もしくは自粛による日常生活の変化と肥満に有意な関連がある可能性が示唆され,今後感染者数や大都市と地域の違いなども考慮に入れた解析が必要と考える.

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© 2022 一般社団法人 日本老年医学会
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