日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
地域在住高齢者における口腔機能低下有訴者の口腔機能―後期高齢者の質問票を構成する口腔機能関連項目を用いた検討―
釘宮 嘉浩岩崎 正則小原 由紀本川 佳子枝広 あや子白部 麻樹渡邊 裕大渕 修一河合 恒解良 武士藤原 佳典井原 一成金 憲経五十嵐 憲太郎星野 大地平野 浩彦
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 58 巻 2 号 p. 245-254

詳細
抄録

目的:本研究の目的は,後期高齢者の質問票の口腔機能類型質問に相当する基本チェックリストの咀嚼機能と嚥下機能を評価する質問項目から,後期高齢者の質問票の口腔機能類型質問の該当者率を推定することおよび,該当者の具体的な口腔機能を明らかにすることである.方法:本研究は,地域在住高齢者699名(男性274名,女性425名,平均年齢73.4±6.6歳)を対象とした.後期高齢者の質問票の口腔機能類型質問の基となった基本チェックリストの2つの質問項目を用いて,対象者の咀嚼機能と嚥下機能を評価した.質問に該当した者を,それぞれ咀嚼機能低下と嚥下機能低下とした.具体的な口腔機能として,現在歯数,機能歯数,口腔衛生状態,口腔粘膜湿潤度,咬合力,オーラルディアドコキネシス/pa/,/ta/,/ka/,舌圧,混合能力,咬断能力,EAT-10を評価した.EAT-10は3点以上を機能低下の基準値とした.結果:対象者のうち,咀嚼機能低下の該当者率は21.5%,嚥下機能低下の該当者率は26.6%だった.両方に該当した者の割合は7.4%だった.咀嚼機能低下の該当者は,非該当者に比べて現在歯数,咬合力,オーラルディアドコキネシス/pa/,混合能力,咬断能力が低値を示し,EAT-10の基準値の該当者率が高値を示した.嚥下機能低下の該当者では,EAT-10の基準値の該当者率のみが非該当者に比べ高値を示した.結論:咀嚼機能低下の該当者率は,前期高齢者で15.6%,後期高齢者で29.4%だった.嚥下機能低下の該当者率は,前期高齢者で27.8%,後期高齢者で25.0%だった.咀嚼機能低下と嚥下機能低下の両方に該当している者の割合は,前期高齢者で6.0%,後期高齢者で9.5%だった.また,本研究で用いた質問項目で咀嚼機能低下に該当した高齢者は,複数の口腔機能の低下が認められた.

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top