日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
非結核性抗酸菌症治療中に気胸を発症した高齢女性の1例
安藤 克敏石井 正紀米永 暁彦柴崎 孝二山口 泰弘浦野 友彦小川 純人秋下 雅弘
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2018 年 55 巻 1 号 p. 136-142

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抄録

症例は82歳女性.X年に胸部異常陰影を認め,他院で非結核性抗酸菌症(NTM症)と診断され,喀痰検査ではMycobacterium avium complex(MAC)が検出されており,以降は未治療で経過観察されていた.当院呼吸器内科でX+15年7月からクラリスロマイシン800 mg/日,エタンブトール750 mg/日,リファンピシン600 mg/日で抗菌薬治療開始となっていたが,本人の体調不良と中止希望により,同年11月からエリスロマイシン単剤治療となった.喀痰培養ではX+14年から陰転化は見られていない.その後,当科転科となり,X+17年1月胸部単純CTで右優位の空洞壁肥厚が認められ,NTM症の増悪が考えられたためクラリスロマイシン600 mg/日(12 mg/kg),エタンブトール750 mg/日(15 mg/kg),リファンピシン450 mg/日(9 mg/kg)を再開した.内服再開後40日頃から胸痛,43日目に右背部痛,右胸痛,呼吸困難を自覚し同日緊急入院となった.胸部単純X線と胸部単純CTにて,右肺に気胸及び胸水を認め,胸腔ドレーンを留置した.その後のクランプテストで右肺の膨張を確認したため,胸膜癒着術を必要とせず,挿入後の入院第10病日にドレーン抜去とした.

今回我々は,NTM症の治療中に気胸を合併した症例を経験した.NTMの増悪により,臓側胸膜が脆弱化していたことに付け加え,抗菌薬治療再開後に壁肥厚及び炎症所見が軽快傾向を示し,壁の癒着が解除されたため気胸を呈したと考えられる.本症例は高齢者のNTM症治療経過中における併発した気胸として重要な症例と考えられたため報告する.

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