日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
在宅介護における予防医学
要介護度の悪化を防ぐ
安藤 富士子
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2004 年 41 巻 1 号 p. 61-64

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抄録

在宅介護を推進するためには質と効率の高い介護の供給とともにADLの低下を防ぎ, 新たに要介護状態となる虚弱老人を減少させる予防医学的な方法論が必要である. 寝たきり老人の中で, 疾患発症により直接に寝たきりになったものは約30%に過ぎないと言われている. 二次的に「寝たきり」を引き起こす要因として重要なものに「廃用症候群」と「閉じこもり」がある. 安静や不動によってもたらされる廃用症候群は筋力の低下や骨密度の減少, 知的関心の低下, 感染症などをきたし, さらにADLを悪化させる. 生活に密着した日々のリハビリテーションが廃用症候群の予防には重要である. さらに前段階のADL悪化要因として最近, 高齢者の「閉じこもり」が重用視されている.「閉じこもり」には, 加齢や身体的要因のほか, 尿失禁や転倒を怖れるための外出恐怖などの心理的要因, 社会的役割・家庭内での役割の喪失といった社会的要因や環境要因が関連している.
脳血管障害や大腿骨頸部骨折など, 身体的なADL低下要因を予防するとともに, 高齢者の社会参加や知的関心を高めることや若い時期からの運動習慣が要介護高齢者を減少させるための予防医学的な方策として重要である.

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