2001 年 38 巻 3 号 p. 409-413
症例は79歳女性, 転倒による腰椎圧迫骨折のため2000年1月18日に当院入院となったが, 入院前より感冒様症状と38度台の発熱があり, 入院後の胸部X線にて右肺野の網状影を認めたため, 肺炎の診断のもと抗生剤による加療を行った. しかし, あらたに肺炎が左肺野にも出現し低酸素血症も進行, 喀痰の塗抹培養でも有意な菌は検出されなかったことから, ウイルス感染による肺炎を疑った. 進行性の呼吸不全に対しメチルプレドニゾロンによるパルス療法を行うとともに, nasal BiPAP (Bi-level Positive Airway Pressure) による非侵襲的陽圧呼吸 (noninvasive positive pressure ventilation: 以下NIPPV) を併用とした. その後徐々に血液ガスは改善し, 装着後7日間でNIPPVから離脱可能となり, その後肺炎も治癒した. 2週間後のペア血清にてインフルエンザA抗体価が128倍まで上昇していたことからA型インフルエンザ肺炎と診断した. NIPPVは本例のように進行性肺炎による急性呼吸不全に対しても有効で, 特に高齢者で人工呼吸器からの離脱が困難であると予想されるような症例に対しては, まず最初に試みてみるべき換気補助療法であると考えられた.