日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
アルツハイマー病の疾患関連遺伝子
浦上 克哉涌谷 陽介和田 健二山形 薫足立 芳樹中島 健二
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2001 年 38 巻 2 号 p. 117-120

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抄録

家族性アルツハイマー病 (FAD) の原因遺伝子として, アミロイドβ蛋白前駆体 (APP), プレセニリン1 (PS1) 及びプレセニリン2 (PS2) の3つが同定されている. しかし, この3者の遺伝子変異は, 我々の山陰地方におけるFADでは1例もなく, 世界的にも約30%以下のFAD家系を説明できているだけである. 今後, さらに未知の原因遺伝子の検索が必要と思われる.
孤発性アルツハイマー病 (SAD) における遺伝的危険因子としてアポリポ蛋白E (アポE) がよく知られている. しかし, アポE以外の遺伝的危険因子が未だ未同定である. 我々は, アルツハイマー病 (AD) とエストロゲンの関連に着目し, エストロゲンレセプター (ER) α遺伝子多型とADの相関を検討した. その結果両者に有意な関連が認められ, ERα遺伝子はアポEに次ぐSADの遺伝的危険因子である可能性が示唆された.
SADにアポE4を有する例が多いことは分っているが, アポEがADの発症にどのように関与するかは明らかでない. そこで, アポEmRNAの発現をSAD及びダウン症候群 (DS) 脳で検討した. その結果, アポEmRNAレベルはSAD及びDS脳で対照群に比較して有意に高値を示した. アポEの量的増加がAD病変の形成に関与している可能性が示唆された.

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