日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
寝たきり高齢者の臨床的検討
在宅寝たきり者と入院寝たきり状態患者の比較
名倉 英一井形 昭弘藤田 晴子井上 豊子管野 和子松浦 俊博徳田 治彦細川 武彦
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1997 年 34 巻 7 号 p. 589-595

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抄録

目的と対象: 高齢者の寝たきり問題を検討するため, 65歳以上の愛知県大府市の在宅寝たきり者 (以下, 在宅と略す) と国立療養所中部病院に入院中の寝たきり状態の患者 (以下, 入院と略す) の実態を比較検討した.
方法: 在宅は介護者, 入院は担当の看護婦と患者の家族に, 調査表を依頼するアンケート法で行なった.
結果: 在宅は116名中85名 (回答率73.3%), 入院64例中62名 (回答率96.9%) の回答を得た. 寝たきり者の年齢の中央値は在宅・入院とも81歳で, 年齢分布に有意差を認めず, 性別は, 在宅・入院とも女性は男性の1.8倍と多く, 特に80歳以上で女性の比率が増加していた. 寝たきりの原因疾患が一つの症例は在宅62.5%, 入院64.4%で, 残りは複数の基礎疾患を有していた. 最も多い基礎疾患は脳血管障害で在宅42.5%, 入院39.0%を占め, 次いで, 在宅では痴呆31.3%, 老衰17.5%, 骨折13.8%が多く, 入院では骨折27.1%, 痴呆20.3%, 老衰16.9%の順であった. 寝たきりの期間の中央値は在宅2年3月, 入院3月で, 6月未満の割合が入院で有意に多かった (p<0.0001). 寝たきり以外に治療中の疾患を有する割合は, 在宅60.0%, 入院67.7%で, 疾患は, 高血圧・痴呆・慢性脳循環不全・骨粗鬆症が多かった.入院のうち, 入院前に歩くことが出来た患者は54.8%, 寝たきりに近い状態は24.2%, 入院前も寝たきり状態は17.7%であり, 寝たきり状態の入院にした直接の疾患で最も多いのは感染症で, その7例中5例は肺炎であった. 寝たきりの身体状況の比較では, 在宅と入院の間に有意差を認めなかった. 褥瘡を有していた寝たきり者は, 在宅25.9%, 入院17.7%で, 部位は仙骨部・尾骨部が最も多かった.
結論: 以上の結果は現在の高齢者の寝たきりの実態と成因を示すとともに寝たきり予防への大きな手がかりを与えるものと考えられる.

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