日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
アルツハイマー型痴呆患者にみられる脳室周囲白質病変についての臨床的および病理学的検討
石島 路子今津 修北村 伸赫 彰郎
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1996 年 33 巻 10 号 p. 744-753

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抄録

X線CTでの脳室周囲低吸収域 (PVL) は脳血管性痴呆 (VD) にしばしば観察され, 臨床的検討の多くはVDにおけるPVLの虚血との関係を示唆している. 今回の検討では, アルツハイマー型老年痴呆患者 (DAT) にみられる脳室周囲白質病変について臨床的意義を明らかにするため, その出現時期, 前頭葉徴候, 脳血流量 (CBF) との関係を retrospective に検討した. 対象はNINCDS-ADARDA による Probable AD 37例である. また, DAT 2例については, 剖検し病理所見を得ることができた. 今回の結果では, DATのPVLは病期の進行した例に多く認められ, PVL (+) 群に有意に前頭葉徴候の陽性率が高かった. 皮質平均, 前頭葉, 側頭葉でPVL (+) 群のCBFが有意に低下していたが, 病理学的には虚血性の変化に乏しくDATのPVLはVDのPVLとは異なりDATの脳の変性を主体とする病態と密接な関係をもっていると考えられた.

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