日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
健常高齢者の大脳白質障害と知的機能, 血圧の関連について
山下 一也小林 祥泰福田 準小出 博己岡田 和悟恒松 徳五郎
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1991 年 28 巻 4 号 p. 546-550

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抄録

健常老人を対象に, MRI上での白質障害と知的機能との関連について検討した. 対象は老人会に所属し社会活動を活発にしている, 脳疾患の既往がなくかつ神経学的に明らかな異常を認めない健常老人39名 (64歳~85歳, 平均年齢75.0歳, 男性21名, 女性18名) で, MRI (0.15Tesla) 上, 潜在性脳血管障害を有さないものを対象とした. 白質障害の程度は, MRIにて, 基底核及び側脳室体部を通る水平断T1計算画像を撮影し, T1値が400msec以上の値をもつ白質の部位から側脳室辺縁までの距離を計測することにより, 白質障害の範囲を定量化した. 基底核を通るスライスでは側脳室前角からの距離を測定し, 側脳室体部を通るスライスでは体部前方, 中央部及び後部からの距離を測定し白質障害の指標とした. 知的機能については長谷川式簡易知能スケール (HDS), Kohs' block design test (Kohs' test) を用いて測定した. 1) 前頭葉白質障害の範囲と年齢の関係では, 加齢とともに白質障害の範囲が広がっていくことが示された. 2) 白質障害の範囲とHDSおよび Kohs' test との間には有意な相関は認められなかった. 3) 白質障害の範囲と血圧の関係では, 前頭葉白質障害の範囲と平均血圧には有意な正相関がみられた.
すなわち, 健常老人では, 白質障害と知的機能とはあまり関連がみられなかったが, 前頭葉白質障害と平均血圧とは何らかの関連がある可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本老年医学会
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