日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
サワークリームの物性に及ぼす均質化圧力の影響
奥山 正一郎魚住 充男冨田 守
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1994 年 41 巻 6 号 p. 407-412

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抄録

サワークリームの製造方法において,クリームの脂肪含有率,均質化圧力が物性に及ぼす影響をテクスチャー,離水,熱安定性などの観点から検討し,次の結果を得た.
(1) クリームを均質化した時,脂肪球の平均粒子径は均質化圧力の対数に対して直線的に小さくなった.同じ均質化圧力では脂肪含有率が高いほど粒子径は大きかった.
(2) サワークリームのテクスチャー解析から次のことが分かった.
1) プランジャーの上下移動2mmでは非破壊の, 10mmでは破壊後のテクスチャーが測定できる.
2) 硬度は非破壊,破壊の場合とも均質化圧力が高くなるほど上昇し,同じ圧力では脂肪含有率が高いほど硬度は高くなった.
サワークリームをディップとして使う場合,ポテトチップなどですくって食べることが考えられる.この場合,ポテトチップが折れないことが条件となり,上下移動10mmでの硬度が2×104N/mm2以下が適していた.均質圧力の限界は脂肪含有率20%では約10-1MPa,30%では約5-1MPa, 40%では約1.5-1MPaであった.
3) 凝集性については上下移動10mmの場合は,プランジャーにサワークリームが付着し1回目の上昇時にサンプルに穴があいてしまうため,測定値に信頼性が無かった.移動2mmの場合の凝集性は各脂肪含有率とも均質化圧力が高くなるほど減少し,同じ圧力では脂肪含有率が高いほど低い値を示した.また硬度が高くなるほど減少し,同じ硬度では脂肪含有率が高いほど凝集性は高くなった.
4) 上下移動2mmの場合はサワークリーム表面の付着性が測定でき,均質化圧力を高くすると付着性は低下した.同じ硬度では脂肪含有率が高いほど高くなった.10mmでは,プランジャー側面,底面にサワークリームが付着し引上げられるためサワークリーム内部の付着性が測定でき,硬度が高いほど高い数値を示し,同じ硬度では脂肪含有率が高いほど高い数値を示した.
(3) 離水の傾向は,同じ脂肪含有率では均質化圧力が高く硬度が高くなるほど減少した.同じ硬度では,脂肪含有率が高いほど減少した.ケーキのフィリングに用いる場合,ある程度の硬度と離水が生じにくいという条件が要求されるので,均質化圧力は高く,脂肪含有率が高いほうが望ましいことが分かった.
(4) サワークリームを加熱した場合の熱安定性をカードの量から推定した.どの脂肪含有率とも1段目に10-1 MPa以上の圧力をかけるとカード量は急激に増え,料理のソース原料として加熱処理をするサワークリームでは, 10-1MPa以上の圧力をかけないほうが良いことが分かった.

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