日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
温州ミカン透明果汁の製造に関わるヘスペリジンの挙動
小川 浩史福久 一馬福本 治次福谷 敬三
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1990 年 37 巻 3 号 p. 214-219

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抄録

ヘスペリジンによる二次沈澱を生じない安定した品質の温州ミカン透明果汁を得るため,透明果汁の製造に関わるヘスペリジンの挙動について調べた.
(1) 搾汁後濃縮した混濁濃縮果汁(透明果汁の原料果汁)中の可溶性ヘスペリジンは-20℃貯蔵では不溶化せず,貯蔵温度が高くなるにつれて不溶化の進行が早まった.
(2) UF法での清澄化において,操作温度が高くなると透明果汁中のヘスペリジンが増加した.また,供給混濁果汁の糖度10°Bx, 20°Bxでは,透明果汁中のヘスペリジン量は10°Bxの方が高い値を示した.
(3) 過剰量のヘスペリジンを溶解させた50°Bxの透明果汁を3ヶ月貯蔵した場合,ヘスペリジンの初発濃度の高いものほどヘスペリジンの不溶化が進み,また貯蔵温度の高いほど不溶化の進行が早かった.
(4) 過剰量のヘスペリジンを溶解させた10~60°Bxの透明果汁を3ヶ月貯蔵し,ヘスペリジンの溶解量を調べた.室温貯蔵の50°Bxの透明果汁の溶解量は, 6~7mg/100g (10°Bx換算)であった. 50°Bxの透明果汁では35mg/100g以下のヘスペリジン含量であれば,室温貯蔵3ヶ月では二次沈澱は生じない.また,糖度の低い10°Bxの透明果汁の溶解量は14~15mg/100gであった.貯蔵温度が低くなると不溶化の進行は遅くなり, -20℃の貯蔵では不溶化は進行しなかった.

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© 社団法人 日本食品科学工学会
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