日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
大豆タンパク質-油-水系のゲル形成に対する塩化ナトリウムの影響
山野 善正森忠 義彦三木 英三
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1983 年 30 巻 10 号 p. 552-556

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抄録

粉末パーム油を添加した大豆タソパク質のゲル形成に対する塩化ナトリウム(NaCl)の影響をみたところ,次の結果を得た。
(1) ゲルの硬さはNaCl添加量の増大とともに大きく低下した。その低下の程度は油脂の添加量が多いほど小さかった。
(2) ゲルの保水力は,油脂量が少ない場合NaCl添加量の増大とともに最初減少し, 0.3%付近に極小値を示した後再び増大するが,油脂量が10%の場合にはこの極小値を示さない。
(3) 豆乳を50℃で加熱した場合の粘度は経時的にはじめ増大し,後低下する。最高粘度はNaCl添加量とともに減少したが, NaCl 0.25%の試料が最も速く最高粘度に達した。豆乳の粘度変化とゲルの保水力の変化から,ゲルの物性の変化に及ぼす影響に対しNaClとタンパク質の間に等量関係の存在が推定された。また,加熱時間8分では, NSIはNaCl添加量によって大きく変化し, 0.2%付近で最小値を示した。より長時間の加熱(20分)の場合, NSIの値はNaCl添加の影響を受けなかった。
以上の結果から, NaClは大豆タンパク質の変性に大きく影響を与え,ゲルのテクスチャーを変化させるが,添加した油脂がこの変化を抑制する作用をもつことが推定される。

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