1979 年 26 巻 11 号 p. 480-486
宮崎県内の1地区で採取した牛乳を脱脂乳に調製し,まず85℃で5分間,その後直ちに135℃で瞬間加熱を行い,Ca及びカゼインミセル添加が高温加熱牛乳のレンネットカード物性に及ぼす影響について検討した。得られた結果の要点は次のとおりである。
(1) 高温加熱牛乳のレンネットカード物性は今回の測定条件では測定できなかった。
(2) Ca添加によって高温加熱牛乳のレンネットカード物性は幾分改善されたが,最も改善された80mg Ca/100mlの添加でも未加熱牛乳のレンネットカード物性に達しなかった。
(3) 高温加熱牛乳にカゼインミセル(880mgN/100ml)を添加すると,レンネットカード物性が向上し,未加熱カゼインミセル比0.3において未加熱牛乳に近いレンネットカード物性に達した。
(4) 高温加熱牛乳にCaを80mg/100ml添加し,さらにカゼインミセル(864mgN/100ml)を添加すると,レンネットカード物性が著しく改善され,未加熱カゼインミセル比0.05または0.1において未加熱牛乳に近いレンネットカード物性に達した。
(5) 以上の結果から,高温加熱牛乳のレンネットカード物性の改善には可溶性Caと未変性カゼインの増加が必要であることを認めた。