日本食品科学工学会誌
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テンペ菌で発酵させたキノアのビスケット素材としての適性
松尾 眞砂子
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2006 年 53 巻 1 号 p. 62-69

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抄録

テンペ菌で発酵させたキノア(キノアテンペ,Q-テンペ)を汎用食品の素材として活用するため,薄力粉や中力粉の一部をキノアやQ-テンペの粉末で代替してソフトタイプとハードタイプビスケットを調製し,その物性,呈味性,鉄とα-トコフェロール含量を100%の薄力粉や中力粉で調製した対照ビスケットと比較した.小麦粉の20%をキノアやQ-テンペで代替しても両タイプのビスケットの厚さと体積は変化しなかった.キノア粉末は両タイプのビスケットの官能的評価点に影響を与えなかった.Q-テンペ粉末はソフトビスケットのもろさと味に対する官能的評価点を向上させたが,色調をやや暗くした.小麦粉の30%をキノアやQ-テンペの粉末で代替するとどちらのタイプのビスケットも体積と硬度が減少した.キノア粉末はハードビスケットの口どけが悪いため,官能的総合評価点を低下させたが,Q-テンペ粉末は影響を与えなかった.Q-テンペ粉末で小麦粉の20%を代替したビスケットは鉄とα-トコフェロール含量が対照ビスケットの2.5倍以上多かった.Q-テンペはリン化合物の一部が分解しており,キノアよりラットによる鉄の吸収率が高かった.これらの結果は,Q-テンペ粉末はビスケット素材としてキノア粉末より優れており,小麦粉の20%まで活用でき,鉄やα-トコフェロールの強化材としても有効であることを示唆していた.

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© 2006 日本食品科学工学会
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