日本呼吸器外科学会雑誌
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心停止後の肺移植の可能性に関する実験的検討
死体冷却と死体肺 flushing の効果について
梅森 君樹
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1994 年 8 巻 5 号 p. 576-584

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抄録

心停止後の肺移植における死体冷却と死体肺 flushingの効果を, 犬左肺他家移植モデルにて検討した.ドナーはヘパリン化することなくKClにて犠牲死後, 以下の3群に分けた. WIT (warm ischemic time) 群 (n=6) : 気管チューブを利用して100% O2で肺を inflateした状態で4時間室温下に放置した. CIT (cold ischemic time) 群 (n=6) : WIT群と同様の操作を加え, 氷を用いて体表面から冷却し, 4時間放置した. LPDG (low potassium dextran glucose) 群 (n=6) : 1時間室温下に放置後, 肺を LPDG液で fiushし心停止後から4時間経過するように保存した.各群とも左肺他家移植後, レシピエントの右肺動脈を結紮し, 経時的に6時間まで移植肺機能を評価した.各群とも全例6時間生存した. PaO2, PaCO2は LPDG群, CIT群, WIT群の順に良好に経過した. LPDG群は他の2群に比べ有意 (P<0.05) に良好であったが, CIT, WIT群間には有意差を認めなかった.移植6時間後の湿乾燥重量比は LPDG群4.99±0.23, CIT群5.77±0.56, WIT群6.20±0.26であり, LPDG群はWIT群より有意 (P<0.05) に低植を示した.以上より心停止後4時間の肺を移植に使用するためには100% O2 inflation, 死体冷却だけでは充分な効果はなく, 心停止後早期の fiushingが必要と考えられた.

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