1994 年 8 巻 5 号 p. 560-564
原発性肺癌に対する治癒切除を胸腔鏡下手術でなしうるか否かを検討した。ここでの治癒切除とは, 肺葉内に留まる原発巣を切除し, N1b以上のリンパ節転移がなく, かつpm1を除く遠隔転移がないと確認されることを条件とした.1978年から1993年まで当科で手術を施行した原発性肺癌症例のうち, 主気管支に浸潤が及ばないpT2以下, p2以下かつpmを除くMOの原発性肺癌 (112例) でリンパ節転移が#14, #13に留まる症例 (63例) は, 腺癌では最大35mm, 扁平上皮癌では最大45mmであった.リンパ節転移を検索するのにサンプリングすべき必要最小限のリンパ節は, 右側で肺門リンパ節と#3, #4, #7であり, 左側では肺門リンパ節と#4, #5, #6, #7であった.以上より, 腺癌では35mm, 扁平上皮癌では45mm以下の腫瘍で, サンプリングによりpNla以下であることが確認されれば, 原発性肺癌の胸腔鏡下治癒切除の可能性が示唆された.