北関東医学
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甲状腺刺戟ホルモン (TSH) の甲状腺ホルモン生合成早期促進作用
下田 新一
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1966 年 16 巻 2 号 p. 79-85

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抄録

甲状腺は甲状腺ホルモンを合成し血中に放出している生体内唯一の臓器で, この目的を達成する為に甲状腺は血中より, ホルモン合成に必要なヨードを特異的に集積し得ると云う特殊な能力を持っている。そして甲状腺自身の持つ自律性 (Autonomy) により, 甲状腺に集ったヨードを利用し, 少量ながら甲状腺ホルモンを合成することは出来るが, 生体の生命維持に必要且つ十分なホルモンを合成することは出来ない。甲状腺がこの目的を遂行するためにはどうしても脳下垂体前葉より分泌されている甲状腺刺戟ホルモンTSH=Thyfoid Stimulating Hormone) の助けをかりねばならない。このTSHは生体に必要且つ十分なホルモンを供給する為に甲状腺を刺戟するのが本来の目的であって, TSHそのものには甲状腺機能抑制作用はないと考えられて来た。従って, 下垂体より多量のTSHが分泌し, 過剰のTSHが血中に存在するようになれば, この過剰TSHはやがて甲状腺を強く刺戟し生体に必要以上のホルモン産生と分泌を生来せしめ, 臨床的に甲状腺機能亢進症を発症させる結果となることが予想される。しかし, 実際にはこのような機転で甲状腺機能充進症が発病したと云う確かな報告はなく, 逆にこれを防ぐために次のような機構が存在していると考えられている。すなわち, もし血中に過剰の甲状腺ホルモンが存在すれば, この過剰甲状腺ホルモンは下垂体に作用し, TSH分泌を抑制し, 血中TSH濃度を低下させるので, 更に甲状腺ホルモンの産生を増すことはない。このようにTSHを媒介として, 云うならば甲状腺自身が甲状腺を自から調節 (Self-Regulation) していると云う生体にとって極めて合目的的機構が下垂体と甲状腺との間に成立しており古くからFeed Back機構として知られて来た。
本文はTSHがどのように甲状腺ホルモン生合成を促進するかを自からの経験を中心に詳述するのが目的であるが, 同時に, TSHの各種甲状腺機能促進作用の概要を, 特にその早期作用を中心に述べることにする。

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