2012 年 62 巻 2 号 p. 169-173
症例は66歳の男性. 胃内視鏡検査とCTで, 胃体上部後壁に最大径4 cmの壁外発育型胃粘膜下腫瘍を認めた. EUS-FNA (endoscopic ultrasonography fine needle aspiration) で胃GIST (gastrointestinal stromal tumor) と診断され, 腫瘍径から手術適応と判断された. 臍に4 cmの皮膚切開を置き, ラッププロテクターと手袋を用いて単孔式腹腔鏡下手術とした. 腫瘍は体上部後壁から壁外に発育する円形の腫瘍で, 偽被膜に覆われており周囲への癒着は認めなかった. 自動縫合器を用いて胃壁を切除して腫瘍を摘出した. 術後合併症は認めず4日目に退院した. 病理結果は胃原発GISTで低リスク群であり, 切除断端は陰性であった.
一般的に単孔式腹腔鏡手術は通常の腹腔鏡手術より手技が煩雑になるが, 通常とほとんど同様に手術が施行できた. 腫瘍摘出のために元々必要である小開腹創以外に傷跡が残らないため, 単孔式腹腔鏡下手術はGISTに対する整容性と患者の満足度の高い治療法の1つと考えられた.