北関東医学
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発達過程のラット中枢神経系におけるホスファチジルイノシトール合成酵素 (PIS) mRNAの分布とその経時的定量
今井 英明
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1999 年 49 巻 2 号 p. 65-72

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抄録

ホスファチジルイノシトール合成酵素 (PIS) は, CDP-ジアシルグリセロール (CDP-DAG) とイノシトールからホスファチジルイノシトール (PI) を生成する反応を触媒する.生成物のホスファチジルイノシトールは, 生体膜の構成成分の1つであると同時に, 細胞内セカンドメッセンジャーを産生するホスホイノシタイドの前駆体であるので, この酵素は, リン脂質合成酵素のなかで, 重要な1つと認識されている.今回, in situハイブリダイゼーション法で若年ラットの中枢神経における PIS mRNAの発現を検討すると, 嗅球, 海馬, 小脳, 脊髄で高かった.そこで更に各々の部位について, RT-PCR (reverse transcription-polymerase chain reaction) を用いてPIS mRNAの定量し, その経時的変化を, 生後0日目 (P0), P7, P14, P21, P28, adultの6段階で測定した.生後0日目では, 嗅球では中程度の発現を認めたが, 海馬, 小脳, 脊髄では, 発現は微量であった.いずれの部位でも, 生後の1週間で, 最も増加し, P7からP28にかけてはピークを維持し, adultになると発現が減少していた.PIS mRNAの発現は, 出生直後からの初期発達過程では, 中枢神経系のこれらの部位でそれぞれに調節されていることが示された.

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