断熱材の熱伝導率測定に関し、100 ℃以上の温度範囲において熱伝導率測定の標準物質となるものがほとんど無いという問題がある。例えば保護熱板法(GHP 法)による測定では、測定装置あるいは測定者の違いにより、同質材料であるはずの断熱材の熱伝導率に大きな差が生じている。そこで、測定方法や装置の違いが、断熱材の熱伝導率測定にどれほどの影響を与えるものなのかを調査するとともに、標準物質が存在しない温度範囲で如何にして正確な測定をするかという課題に取り組むことにした。本研究では、同一あるいは同質・同形の試験体を使って、100~1300 ℃の温度範囲においてGHP 法、周期加熱法および非定常熱線法による測定が可能な装置を開発し、それらの測定結果を比較することで、測定方法の違いによる熱伝導率の差について検討した。その結果、少なくとも同質・同形の試験体を対象にする限り、測定方法が異なっていても±10% の範囲で一致することが分かった。したがって、標準物質が存在しない100 ℃以上の温度範囲では、ある測定方法で得られた熱伝導率を、異なる測定方法による結果と比較することが、正確な熱伝導率を得る有力な手段の一つになると考えられる。