2016 年 31 巻 4 号 p. 688-696
症例は56歳男性.検診の腹部超音波検査で膵尾部に53mm大の低エコー腫瘤を指摘され当科を受診.造影CT検査で膵尾部に境界明瞭な乏血性腫瘤を認めた.腫瘍マーカーではCEA,CA19-9は正常値であったが,α-fetoprotein(以下AFP)が65.9ng/mlと高値を示した.膵腺房細胞癌を疑い膵体尾部切除,脾・左副腎合併切除を行った.病理組織学的所見では好酸性胞体を持つ腫瘍細胞が腺房様,索状,胞巣状に増殖していた.免疫染色ではtrypsin陽性,AFP陽性,synaptophysin陽性,chromogranin A陽性であり,腺房細胞と神経内分泌細胞の両者への分化を示す膵原発AFP産生mixed acinar-neuroendocrine carcinomaの診断となった.本邦における膵併存癌の報告は少ない.本疾患はさらにまれであり,若干の文献的考察を加えて報告をする.