肝臓
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症例報告
治療の機会に恵まれずに経過したC型慢性肝炎が,非代償性肝硬変にまで進展したのちにC型肝炎ウイルスの自然排除に至った1例
松本 萌松下 雅広竹下 悠横田 彬彦花岡 智彦宇於崎 宏城渡邉 晋也金山 広和石橋 浩平川田 一仁
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2021 年 62 巻 9 号 p. 555-560

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抄録

C型慢性肝炎に罹患しながらも治療機会に恵まれずに経過した54歳の女性が,非代償性肝硬変にまで進展した後にC型肝炎ウイルス(HCV)の自然排除に至った1例を経験した.外来で経過観察中,数カ月間トランスアミナーゼの変動が持続した後にHCV-RNAが検出感度以下となり,現在まで2年間検出感度以下を維持している.HCVの自然排除後には速やかなビリルビン値の低下と速やかなアルブミン値の上昇が観察され,Child-Pughスコアは2年間で8点から6点に改善した.HCVの自然排除の要因として,女性,若年期の感染,低ウイルス量,HBVとの重複感染,IL-28B SNPsがmajor alleleなどの指摘がある.また,HCVの自然排除においては線維化の進行した肝硬変のほうが低ウイルス量を背景に免疫系が非特異的に刺激される結果としてHCVの自然排除が起こりやすい可能性もある.

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© 2021 一般社団法人 日本肝臓学会
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